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2冊の「おおきなかぶ」の考察

子どもの本

4社全ての1年生の最初の教科書に「おおきなかぶ」が載っていました。

光村図書は西郷竹彦さんの訳、
他の教科書は内田莉莎子さんの訳です。

有名なこちらの絵本は内田莉莎子さんの訳で
西郷竹彦さん訳の市販の本はありません。

この2つの訳の違いについて興味を持ったので考察してみました。

きんかん

子どもへの読み聞かせのために

大人になってからまた絵本を読むようになりました。

絵本は子どものために読むものと思っていましたが

いい絵本からは大人になってから発見することもあり面白いです!

訳者による表現の違い

こちらのサイトで詳しく紹介されていますが、
かぶを引っ張るときに、登場人物が出てくる順番が逆になっています。

まごが おばあさんを ひっぱって
おばあさんが おじいさんを ひっぱって
おじいさんが かぶを ひっぱって

内田莉莎子さん 訳

かぶを おじいさんが ひっぱって
おじいさんを おばあさんが ひっぱって
おばあさんを まごが ひっぱって

西郷竹彦さん 訳
  • 内田さんの訳
    • 最初に直前に呼ばれた登場人物の文章を付け加えていて、
      最後は常に「おじいさんがかぶをひっぱる」文章
    • 文中の登場人物は小さい順に紹介
      …→まご→おばあさん→おじいさん(→かぶ)
  • 西郷さんの訳
    • 最初は常に「かぶをおじいさんがひっぱる」文章で、
      最後に直前に呼ばれた登場人物の文章を付け加えている
    • 文中の登場人物は大きい順に紹介
      (かぶ←)おじいさん←おばあさん←まご←…

短文で見た時は、
内田さんの訳(○○が△△をひっぱって)のほうが
西郷さんの訳(△△を○○がひっぱって)よりも自然です。

では、西郷さんはなぜこのような表現にしているのでしょうか。

言語の違いと思考の違い

「おおきなかぶ」の原作はロシア語ですが
翻訳という点に関連して「英語と日本語の語順の違い」について考えました。

例えば、マザーグースの歌「The house that Jack built」を訳した場合、

This is the rat
that ate the malt
that lay in the house
that Jack built.

The house that Jack built

英語の順序のまま訳した場合は

①
これは ねずみ
(ねずみは) モルトを たべた
(モルトは) 家に あった
(家は) ジャックが たてた

この内容を、登場の順序を逆にすることで
より自然な日本語になります。

②
これは
ジャックの たてた
家に あった
モルトを 食べた
ねずみ

この①と②の順序の違い、
先ほどの内田さんの訳と西郷さんの訳の違いと似ていませんか?

私は、歌から受け取る印象が
英語や①だと「that Jack built(ジャックが たてた)」が強く
②だと「ねずみ」が強くなりました。

これは、「英語は結末が最初」「日本語は結論が最後」なのに
英語も日本語の感覚で考えてしまっているために起こる違和感だと思います。

「おおきなかぶ」はロシア語が原作です。

確認できたロシア語の「おおきなかぶ」の絵本では内田さん訳と同じ順番でした。
(…→まご→おばあさん→おじいさん(→かぶ))

なので最初は、ロシアでも「結論が最初」という英語と似た感覚があり
西郷さんは原作の意図を伝えるためにわざわざ順序を逆にしたのでは?と考えました。

しかし、調べてみたところロシア語の語順は基本的に自由で
文章によって日本語に似てる時と英語に似てる時があるようです。

そのため、残念ながらロシア語のネイティブの方がこのお話を読んだ時に
どのような印象を受けるのかは分かりませんでした。

英語的な「最初が重要」や日本語的な「最後が重要」とはまた違う感覚になるのかもしれません。

(ご存じの方、教えてください。)

訳者が表現したかったこと

先ほどの「日本語の文法は結論が最後」ということに関連して
どちらの文章でも最後に書かれている言葉の印象が強く残ると感じました。

  • 内田さん訳
    • 常に「おじいさんがかぶをひっぱること」が印象が強い
  • 西郷さん訳
    • 直前に呼ばれた登場人物が印象が強い

つまり

  • 内田さん訳
    • 「おじいさん」と「かぶ」が常に主役
    • 絵本の大部分を占める大掛かりな収穫を体験した後に、”大きなかぶになった”という絵本の序盤にあるの「かぶ」の表現がリアルに感じられる。
    • りっぱなかぶになったのは、「おじいさん」が「かぶ」を大切に育てた過程があったからだと、絵本には書かれていない「おじいさん」と「かぶ」の関係を想像しやすい。
  • 西郷さん訳
    • 登場人物のひとりひとりが主役になる場面があり、特に最後に出てくる小さなねずみがいなければかぶはぬけなかったことが印象に残る。
    • 力の弱い者でも役割を果たしていて、みんなで協力して目的を達成することの大切さが伝わる。
    • 他の登場人物を呼びにいく場面ではどんな会話があったのかな?普段の関係性はどうなんだろう?など登場人物それぞれの絵本に書かれていない物語を想像しやすい。

これらの考察については、上記のサイトでも翻訳者自身が似たような言葉で語っていました。

まとめ

言語によって思考が違うことや、同じ言語の内容でも表現によって受ける印象が変わることが実感できました。

AI技術の発展により、今ある仕事がAIに奪われると言われています。

単なる情報ならAIの得意とするところですが、
今回感じた「言語による思考の違い」や「表現によって受ける印象」という人間ならではの感覚は
人と人とのコミュニケーションに欠かせない要素です。

英語を学ぶ意義とは、受験英語の単なる「翻訳」ではなく、その先にある「異文化理解」につながるのですね。

追記:第二言語習得のメリットについて、こちらの動画が参考になったので共有します。

お役にたてれば嬉しいです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

子どもの本
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